それは、ある寒い日の夜のこと。
おとな達は子ども達から隠れて、クリスマスのプレゼントをラッピングしていた。
ぼくは、その姿を窓のそとから横目で眺めてから空に視線を戻した。
「泣いてる‥」
ちいさなちいさな声が、微かにぼくの耳に届いた。
どこかの小さな家で、こどもがないてる。
ちいさな声を頼りに、ぼくは雪道を歩き始めた。
深い雪に埋もれた森の小さな村。
その村の奥にある明かりの灯らない家の小さな暖炉の前で、ぼくは見つけた。
毛布に包まるのではなく抱え込んで、ちいさなこどもが冷えきった暖炉の前でうずくまり泣いていた。
震える小さな背中を見て、ぼくは静かに部屋にはいった。
ちいさなちいさな泣き声が響く寒い部屋で、月明かりに照らされたツリーの飾りだけが光っていた。
キラキラと輝くキャンディーをツリーから一つはずして、そっとちいさなこどもに近付いた。
鼻先にゆっくりと差し出して、毛皮で寄り添うように隣に座った。
「泣かないで」
泣かないで 泣かないで ちいさな子
いまは ぼくが そばに居るから
怖がらないで ちいさな子
いまは 暖かな被毛が きみを包むから
ぼくから きみへ
すこしはやい クリスマスプレゼントを あげよう
あまい あまい キャンディーが きみの心を 癒やしてくれるように
ちいさなちいさなこどもは、おおきく目を開いてぼくを見つめた。
「トナ、カイ‥」
頬を伝うなみだをひとなめ、ぼくは大きく頷いた。
「クリスマスは、もうすぐだよ?トナカイも準備があるんでしょ」
行ってしまってはイヤだというように、ちいさな手がぼくの胸元の被毛をギュッと掴んで、すこし痛い。
「だいじょうぶ。ぼくはまだ見習いトナカイだから」
ほんとは見習いだからこそ、小屋から出てはいけなかった。
それでも、ちいさな声はぼくの元まで届いたんだ。
「おやすみ、ちいさな子。ぼくが、そばに居るから」
ちいさな右手で、ぼくの被毛をつかみ。
ちいさな左手で、ぼくがあげたキャンディーを握りしめる。
ああ、きみがぼくの最初の子。
ぼくのファースト・チルドレン。
寒い寒い夜。
穏やかに眠るちいさなきみたちに、ぼくは贈り物を届けよう。
窓のそとから、きみたちの穏やかな寝顔を見て、ぼくは思い出すんだ。
ぼくのファースト・チルドレン。
夜が静かに降り積もり、空に飛び立つ夜が来る。
「どこだい?私のトナカイ」
ぼくを呼ぶ声がする。
「ここですよ。サンタさん」
振り返れば、赤い服の彼が居る。
ぼくの愛しい最初の子。
最愛のサンタが‥。
【end】
ニックネーム りゅぐ at 20:48|
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